あ行の作家

出星前夜

飯嶋和一 【小学館】

この人の書く話はいつも、聡明な正義の人が理不尽な目にあって死ぬという、こう言うと身も蓋もないんですけどまさにそんな感じなんです。

しかも今作は島原の乱をテーマにしてると聞いたら、もう読む前から気が重いわ。。

ほんとに嫌々ながら読み進めるんだけど(笑)、それでも最後まで読むのは、読んだらきっといいことがあるとわかっているから。
いいことというか、読んだほうがいい、読むべきという感じです。

歴史に名高いキリシタン一揆である島原の乱は、じつは藩主の苛政に追い詰められた民衆による死を賭した反抗であり、それがたまたまキリシタン信仰の土地であっただけだったという物語。

いつもながら権力者はとことん無能で鼻持ちならず、対する主人公たちはあくまでも聡明で、もうほんとに読んでてギギギ…って感じ(爆)
どう見てもこっちが正しいことを言ってるのに、権力者が自己の利益や保身のために事実を揉み消したり踏み潰したり捏造したりするのがほんとアタマにくるわ!!

しかし今作は、途中から個人の心情を追うことはせずに、客観に徹して蜂起の状況と戦いの様子を丹念に描写しているので無念度はやや抑えめです。
城攻めの仕方とか武器の使い方とかフーンって感じで、歴史資料を読んでるようで興味深い。

まあ、事実上蜂起の張本人といえるジュアンが、いよいよ民衆が盛り上がってきたところで勝手に虚無を感じてさっさと離脱しちゃったのにはおいコラちょっと待てや!って感じでしたけど。納得いかないわ~。戦え!!(←鬼)

納得いかないといえば、なんで幕府はキリシタン信仰を禁止したんですかね。
表向きは外国の勢力が力を持つのを防ぐためってことですけど、これ読んでるとキリシタンというのはとにかく「耐えろ、赦せ」がモットーだと。
地上での苦しみに耐えれば耐えただけ天国に行ったときに幸せになれるというのが教義なので、藩主がどんな横暴を行おうと逆らわずにただ黙って従えと。

だったらそのままにしておけばよくない?

為政者としては何をやっても我慢してくれる、そんな羊のようにおとなしくなる教えならかえって都合がいいじゃない。黙って広めておけばいいのに。と思うんですけれども。
というか、だから実際に西洋ではキリスト教を国教として信仰させて、政治安定の基盤にしたわけよね。

なんで日本はそれをしなかったのかしら。そういう教義だということがきちんと把握できてなかったんだろうか。

といったら、歴史に詳しい友人が、いやーやっぱ信仰のある人たちはいっぺん火がつくと熱狂するからね。幕府は一向一揆でこりてたんだよ。と解説してくれました。

確かに、このお話を読んでも、結末は全滅だとわかっていても立ち向かっていく蜂起勢の熱狂はまさに信仰あるがゆえで、「先を争って海に駆け込み次々と溺れ死ぬ鼠の一群」そのもの。
そういう得体の知れないパワーはたしかに警戒すべきと映るんだろうけど、

そんなの為政者がちゃんと舵取りをしさえすればいいことじゃん!

結局は権力者側の歪んだ欲望や無能さが、まじめに日々を生きている農民たちや物事を正確に見きわめている聡明な人々を苦しめてるんじゃん!

ということで、やっぱり今回もいつものパターンなのでした。
なんていうか、戦う相手が大きすぎてどこを糾せばいいかわからないというか、しょせん一個人の力ではどうにもできないものが敵なところがまたジレンマなのよね。。

2009年5月

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クリスマスのフロスト

R.D.ウィングフィールド/芹澤恵(訳) 【創元推理文庫】

古き良き英国刑事モノでおもしろかった!
どれもクセのあるキャラがみんな立ちまくりで笑えます。
いくつもの殺人事件が起こるけれど、本当に悪いヤツや嫌なヤツはいないの。みんなにそれぞれ、彼らなりの理由があるんです。

フロスト警部がまたイイ味なんだな~。なんかコントみたいな人なんだけど、いたって真面目で深みのある人です。小学生並みの下ネタ好きですが。ドタバタの中にチラチラ見え隠れする真摯さのバランスが絶妙。

ユーモラスでハートウォーミング、それでいて語りは毒舌というすんごく英国作家らしい、つまり私好みの1冊。シリーズ物だそうなので続きを読むのが楽しみ!

2008年11月

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ジーヴスと恋の季節

P・G・ウッドハウス/森村たまき(訳) 【国書刊行会】

人気のジーヴスシリーズ。
郊外の館で繰り広げられるドタバタの密室劇。3組の恋人たちのもつれまくった恋模様に今回は意外とバーティが大活躍?でジーヴスは少なめです。オチはもちろん彼がつけますけど。

プロットは複雑かつイキイキしていて、あいかわらずシェイクスピアの喜劇のよう。
もう6冊目?7冊目?なのでさすがに若干ワンパターンな感じは否めませんが、これはこれでいいんでしょうね。偉大なるマンネリってやつね。家の本棚に並べておいて、暇なときに何度も読み返して楽しむタイプのお話です。

にしてもバーティはかわいいな!

2008年5月

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濁った激流にかかる橋

伊井直行 【講談社文芸文庫】

初読の作家ですが、ものすごく文章がうまいです。
ってすごい上から目線ですが(笑)、別に新人さんではないんですね。知らなかった。ほかのも読まなきゃ!

濁った激流に分断された右岸と左岸。それをつなぐ巨大な橋の上で繰り広げられるカオス。
不思議な舞台での物語ひとつひとつにスキがなくて、すごく整然としていて、それでいて難解ではない。寓話のようでもSFのようでもあって、古いようでも新しいようでもある。
連作集なので前の物語の登場人物やエピソードをほのめかす部分も多いのですが、それも思わせぶりすぎず、嫌みなところがないです。
というわけでかなり好みかも!

2008年2月

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1984年

ジョージ・オーウェル/新庄哲夫(訳) 【早川書房】

ちょっと北朝鮮について調べていたら出てきたので読んでみた。
20世紀半ばに書かれた小説で、超管理社会下での恐怖がテーマ。
スターリン体制を想定しているとのことですが、なるほど北朝鮮ね。というか全体主義国家ってこういうことなんだよね。

前半の秘密の恋のせつなさ、あやうさと、後半の凄まじさの対比がすごいです。読みごたえあり。
SFというか哲学書だなあ。キューブリックの映画にありそう。(白黒でな)
端正なんだけどコワイっていう。

なんとなく関連→「善き人のためのソナタ」(06独)という映画があって、東ドイツの国家諜報員の話なんですが、やっぱり端正で静謐で緊張感にあふれた良作です。
ついでに図らずも東独コンボで見てしまった「グッバイ・レーニン」(03独)はベルリンの壁崩壊のころの東独庶民を描いていて、逆にほのぼのハートウォーミング。

2007年11月

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地獄変・偸盗

芥川龍之介 【新潮文庫】

美しく張りつめて無駄のない龍サマの文章は読むと頭が調律しなおされる感じがするので、昔からよく読んでます。文章自体が好きだから作品は何でもいいんだけど、「地獄変」は特に好き。何度読んでもすさまじく美しいわ。

2007年12月

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血まみれの月

ジェイムズ・エルロイ/小林宏明(訳) 【扶桑社】

ロイド・ホプキンズ刑事シリーズの第1作。
ディープです。サイコです。シリアルキラーです。。
実は同じトラウマを持つロイド刑事と犯人が別々のかたちでそれを昇華しようとし、そのことで知らず知らずのうちにシンクロしていく様子がスリリング。

もう20年ぐらい前に書かれた作品で、解説でトラウマのこと「トローマ」って言ってるのが時代を感じさせます(笑)最初なんのことかと思ったよ。

2007年12月

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ホプキンズの夜

ジェイムズ・エルロイ/小林宏明(訳) 【扶桑社】

ロイド・ホプキンズ刑事シリーズ第2作。
この作家の基本プロットはいつも同じ(トラウマ持ちの暴力的な刑事・美しくて知的な娼婦・サイコ野郎←オイ)なんですが、それがツボなら何も問題ありません。
頭が切れてタフで孤独な一匹狼の主人公、超ツボです。ニック・ストーンに匹敵するツボキャラ。つくづく私ってこういう男がスキなんだわ~。

2007年12月

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自殺の丘

ジェイムズ・エルロイ/小林宏明(訳) 【扶桑社】

ロイド・ホプキンズ刑事シリーズの3作目(最終作)。
今回は犯人がサイコではなくふつうの?銀行強盗でトラウマなしでしたが、最後の最後にそれをフォローしてあまりある衝撃の告白が。なに?!と動揺しました(笑)

J.エルロイも潜在的ゲイなのかしら。(それとも腐・・・?)
衝撃のあまり?オチがよくわからなかったよ。だれか解説!もしくは続編プリーズ!

2007年12月

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