ま行の作家

向田邦子まつり

初めて読んだ向田邦子は「父の詫び状」(講談社文庫)
さらりとしたエッセイ集なんですが、なにこれ泣ケル…!
可笑しくてクスクス笑っちゃうのに、まさにお天気雨のように涙が出ました。

きょうだいが多くてごちゃごちゃしてる感じとか、お父さんの見えないところで女同士で目配せし合う感じとかがウチの家族にも通じるとこがあるのよね~。家族ネタで泣いちゃうのはあれか。トシのせいか。

実際のエピソードを描いているのに、その中に包まれたほんとうの主題というか、作者の言いたいことが非常に存在感を持って感じられる。それでいて小賢しさを感じないのは語り口の品の良さですね。

「あ・うん」(講談社文庫)は、むかしドラマを見た記憶が。小林薫が出てたやつ。
むかしのひとの潔さ、慎み深さ、美しさがすがすがしいです。

自分の妻に思いを寄せる親友のことを、夫が「惚れてるなんて言っちゃ気の毒だ、あれはおもってるっていうんだ」と言うセリフにぐっときました。繊細だわ。

「眠り人形」「蛇蝎のごとく」(講談社文庫)はドラマのノベライズで、向田邦子の手になるものではありませんでしたが、ドタバタしつつもほろりとさせる、まさに「おはなし」。

ところで、「蛇蝎のごとく」のほうは不倫話なんですけど、この不倫相手の男が全然まったく納得いかないんですけれども!!!
ちゃらちゃらしてて、端から「これは遊びなんで~」とか言い放つし!
何度も言いますけど浮気相手を妊娠させる男は問題外!私が認める不倫は本当に恋に落ちちゃった場合のみ!!遊びの浮気は肯定しません!!!

てことでなんかすっきりしなかったんだけど、この役は津川雅彦がやったそうで、ん~役者によっては説得力が出るキャラなのかしら。。とちょっとドラマを見てみたくなったのでした。
私の脳内イメージでは石田純一で(ベタだわ・笑)まったく許容できなかったんですけど。

そして「思い出トランプ」(新潮文庫)はまさに珠玉の短編集…!
読んだ後になんだか胸がざわつくような。なんとなくイヤな感じが残る。
でも、薄く残ったシミは見ようによっては哀しいようでもあり切ないようでもあり。

なんていうんだろう。巧いんだけど、巧いというより…深いというのかしら。

ひょっとすると当時としてはかなりきわどいことを描いてるのかなあと思います。
私は最近の女流作家はみんな意地悪過ぎるというか露悪的に過ぎる気がしてあんまり好きじゃないんですが、30年前には向田邦子もそう思われてたのかも。。
つまり、それだけ鋭いってことなのね。

2009年3月

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天璋院篤姫

宮尾登美子 【講談社文庫】(上下巻)

この時代、いかに聡明で気概があってもやっぱ女子にはなんにもできなかったんだなあ
…って話でOK?

だって結局は斉彬にもコマとして利用されただけだし、開城のときもうまいこと言いくるめられちゃってるし(爆)
確かに、ある意味慶喜よりも真のラストエンペラーとして激動の時期を過ごしたわけだけれど、結局はただ奥にいただけで、時代の変化を座視しているしかできなかったんだなという印象です。
まあ情報がないからね。実際には誰が何を言って何が起こってるかなんて全然伝わってこないわけだし。新聞もネットもない中で、さらに大奥にいるんじゃ仕方ないんだけど、聡明だ聡明だといわれてるだけその手も足も出ない感じがはがゆいわ。

そもそもその聡明だというのも、確かにしっかりした人だったんだろうけど、どうして表にまで一目置かれるようになったのかがあまり説明されてないような。
和宮方との大奥内での反目はたいへんおもしろかったですけれども(笑)

それにしてもあれだ、大河ドラマは庶民化しすぎでしょ!宮崎あおいちゃんはかわいいけど、やっぱちょっと幼すぎるよ!
昔のひとの、感情を表に出さずに抑えるところとか滅私の精神とか、身分や年齢の序列を敬うところとか、そういう古きよき日本人の美しさってあると思うし、学ぶべきところもあると思うんだけど。
最近は視聴者の親近感を優先するあまり、時代劇の登場人物がみんな現代っ子になっちゃっててどうもな~と思います。

2008年5月

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通訳

ディエゴ・マラーニ/橋本勝雄(訳) 【東京創元社】

何がなにやらさっぱり。(@_@)
言語学習で神経治療をするという考え方はおもしろかったけど、それでファンタジックな感じかなーと思ったら拉致とか臓器売買とかサスペンスになってきた・・・と思ったら謎の殺人事件でミステリー?・・・と思ったら最後は、じつは○○○とお話ができたんでした!
ってアンタ。

なんかとらえどころがないわ。(ひょっとしてギャグなんだろうか。。)
海外の現代文学ってこういうところが難しい。訳によるけど、笑うところなのか単に感覚の違いで大マジなのか判別しがたいところがあるよね。?

2008年1月

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鬼龍院花子の生涯

宮尾登美子 【文春文庫】

お正月に見た深夜映画(1982年、五社英雄監督)で夏目雅子があまりに美しかったので再読。
華やかで流麗な宮尾節もいいですが、あらためてあの映画ってすごいよくできてるんだわ。有名な「なめたらいかんぜよ」の台詞は映画のオリジナルだったのね!

原作ではあくまでも忍従するだけの地味で哀れな松恵が、たった1回きりのあの啖呵のシーンで輝きと命を吹き込まれている。甘やかされた実子・花子ではなく彼女こそが「鬼政の娘」としての気概を真に受け継いだことを匂わせる、あの演出はほんと秀逸!つかかっこいい!

「なめたらいかんぜよ」が大流行したのもわかるわ~。ちょっと真似してみたくなるもの(笑)

2008年1月

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