か行の作家

恩讐の彼方に 忠直卿行状記ほか8編

菊池寛 【岩波文庫】

テーマ小説というらしいですが、これってあれよね、いわゆる二次創作というか。誰もが知っている有名なキャラクターを借りてきてお話をつくる。SSですね(笑)

でもそう考えたら、歴史小説なんてみんなそうなんだな。信長、秀吉、家康なんて日本人なら誰でもある程度背景やら性格やら知ってるもんね。まあナマモノ(笑)なのである程度動かせない事実というのはあるけれど、あとは作家が細かい設定を創作して語らせ、動かすわけだよね。

さて、菊池寛の場合はほんとに創作で、まず語りたい話ありきでキャラをはめ込んでいる感じ。
このお話が、みんな素朴で善意で生真面目でたいへん結構です。
やっぱ古典は安心して読めるよ(笑) 自分を見つめ直したいときや道に迷ったときにはぜったい古典を読むべきだと思います。

2008年11月

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正義の裁き

F.ケラーマン/吉澤康子(訳) 【創元推理文庫】

とある事件をきっかけに知り合った、敬虔なユダヤ教徒のリナとロス警察のデッカー刑事のシリーズ最新作。

刑事小説としていかにもロサンゼルスらしい現代アメリカの社会犯罪を題材にしつつ、リナとデッカーの恋愛物語も同時に進行。
シリーズが進むにつれて、結婚したり子供が生まれたり互いの連れ子や親子関係にスポットライトが当たったりと、プライベート面でもなかなかの大河ドラマです(笑)

シリーズ前作は、ユダヤ人とダイヤモンド業界のつながりについて歴史や政治経済も取り込んだ大作ですごくおもしろかったんですが、今作は…

なんですかこのハーレクインロマンスは。

勉強だけが取り得の地味な私に、学校一ステキな彼がとつぜん話しかけてきたの。いったいどうして?!
激しい恋に落ちてしまった私たち。けれど彼が実はマフィアの息子で、親が決めた婚約者がいたなんて! さらに前のガールフレンドが何者かに殺されて、彼が第一容疑者に?! 神さま、私はどうすればいいの?!

あーこう書いたら改めて、これなんてハーレクイン? というか携帯小説?
途中で何度ももうかんべんしてくださいって気になったわ(爆)

しーかーもー、あそこまでやっといて最後の最後になって逃げるってどういうことよ?! 毒を食らわば皿まででしょうが! 覚悟が足りないんじゃこのコムスメが!

といろいろストレスがたまりましたが、そもそもシリーズの最初の話を読んだとき、何このラブサスペンス(笑)と思ったことをすごく思い出しました。
同一シリーズの中でハーレクインのときとハードボイルドなときがあるんですね。
次回作はハードボイルドがいいです。

2008年11月

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柔らかな頬

桐野夏生 【講談社】

不倫旅行中に失踪した幼い娘を捜し続ける母親、それに協力する余命わずかな元刑事…とかなり期待を持たせる設定ですが、あくまでも桐野流。だんだんと事件そのものからは離れて関係者たちのそれぞれの物語へと拡散していき、最終的には全然別の場所に着地します。

これはこれでおもしろい読み物だけど、推理モノor犯罪モノを期待してるとちょっとスカされた感じかも。設定が興味深いだけに。
「OUT」と似た読後感ですね。あっちはもっとラストがぶっ飛んでたけど。

前々から気になってはいたんだけどなかなか手に取る覚悟が決まらなかった本作。
毎日あんまり暑いので、イヤな話でも読もう!とついに読破しましたが、思ってたほどイヤな話でもなかった…と思うのは私が独身で子供もいないからだろうか(笑)

2008年7月

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八日目の蝉

角田光代 【中央公論社】

不倫相手の赤ん坊を盗み出した女の逃避行と、その後連れ戻された少女が長じてその事件を回想するという2章立て。

イタイ話ではありますが、すごく抑えめに淡々と描いてあるのでイライラしません。
むしろ物足りないぐらい。
こうでしょう、こうでしょう、だからこうでしょうと理路整然と、しかも押しつけがましくなく話をされて、まあそのとおりなんですけど、だけど…うーん…ですよねえ。。と言うしかない。丸め込まれました(笑)

昨今はやりの女性作家はどうもぶっちゃけ過ぎというか、いろんな意味でオンナの嫌なところやイタイところをこれでもかと描く人が多くて、正直食傷気味なんです。露悪的な感じがして。わかってるから皆まで言うな的な。

この人はそういうふうではないんですね。イタイことはイタイんだけど。
不倫はともかく、離婚のめどもたってないのに相手を妊娠させる男は問題外だろ!そういう男を切れないのは女のイタイところだと思います。

というわけで1章の逃亡記のほうがよかったかな。
思わずがんばれ!って気になりました。

2008年5月

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恐るべき子供たち

ジャン・コクトー/中条省平、中条志穂(訳) 【光文社古典新訳文庫】

図書館で借りて読んだのがあまりにもよかったので手元にも一冊。
新訳にしてみました。確かにちょっとわかりやすいかな。でも雰囲気は岩波文庫のほうがあるような。蓮の花は「キスの音を立てて」開くよりも「接吻の音を立てて」開くほうがステキだとおもうの。

岩波版を読んだばかりだけどまた通しで読んでしまい、その後もパラパラめくっては読んでいる。
もうねー、1ページに1つははっとするようなフレーズがあって、どこから開いて読んでも美しいのよ~。まさにバイブル。これは詩よ、詩集なんだわ~。

2008年5月

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恐るべき子供たち

ジャン・コクトー/鈴木力衛(訳) 【岩波文庫】

なんか衝撃的でした。さすが詩人だわ。。
強烈に美しくてあやうい鋭さ。華やかで冷酷で異常な心理劇はどこか芥川龍之介を思わせる。この人もまた、人生を玩ぶ銀のピンセットを持ってたに違いないと思います。

2008年5月

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